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Sage Plaisir J

2003/01/20

[Wintelの世界的独占を阻止せよ。政府がオープンソースの必要性を示す]

2002年12月20日、イベント「オープンソースウェイ」で、経済産業省の 福田秀敬・IT産業室長は、「デジタル家電がPC化してゆくというのは 日本の競争力にとって最悪のシナリオだ」との見解を示した。

Linuxとは言わないが、オープンなものでなければ安心して使えないし、 プラットフォームがブラックボックスでは、そのメンテナンスガ非常に コストが高いことも挙げた。

これに対応し、マイクロソフトは、2003年1月14日、政府向けに ソースコードを開示する無料の GSP契約を発表した。 無料とはいえ、 企業秘密的な理由でマイクロソフトが公開を拒否する部分が出てくるだろう。

「PC化」とは、Windows のことである。Windows は、 開発力を集中させるために CPU のアーキテクチャを制限したり、 OS とアプリケーションの内部的連携を行うなど、オープンではない という噂がある。 そのため、他社まして海外のベンダーが 追い出され、入り込めない状態にある。 そのため、多くの国では Linux のようなオープンなものを推奨している。

しかし、オープンでさえあればいいかというと、私は疑問だ。

一般消費者向け電子機器の展示会である International CES では、 腕時計やメディアプレイヤーなどの電化製品にマイクロソフトが 参入することを明らかにした。 日本の得意な分野への参入だ。 おそらく、日本に対するマーケティングも強化しているだろう。 ただ、おそらく、キーボードやマウスのように最終製品は出さないで、 Windows Automotive や Smart Display のように、フレームワーク (アーキテクチャのテンプレート)をライセンス提供していくのだろうが、 今後、日本製を買っても利益はMSに行くことになりかねない。

ソフトウェア開発において、フレームワークの利用は主流に なりつつある。 情報システム系では、日本のメーカーでも 商品化しつつあるが、組み込み系では、共同開発は行われていても、 独立したフレームワーク商品は現れていない。 共同開発では、 各商品について、利益配分や所有権など面倒なことがあるため、 開発に参加しなかった企業が流用しにくい面がある。 間接業務が コスト高を招くだろう。

共同出資したソフトウェア・フレームワーク・ベンダーを作り、 マイクロソフトのように独占的地位を持たなければ、 日本のソフトウェア技術は、高くても蓄積されていかないだろう。 Linuxは、構成する各要素は無料だが、ソリューションを構成するまで コストが高い。つまり、自由競争によって品質が良い個々の部品を 持っているだけでは不十分で、フレームワークを持たなければならない。 そうしなければ、フレームワークを全般的にトレースしていく ツールが無いために開発効率も落ちる。

しかし、実際にフレームワークの仕様をガチガチに決めてしまうのは、 開発工数が多くかかるし、変化の激しいソフトウェア業界では すぐに陳腐化してしまう。 マイクロソフトのように社内で 柔軟に再利用するような、境界があいまいなフレームワークで なければ、使いにくいものとして捨てられてしまうだろう。 柔軟なフレームワークを管理するには、やはり特定の企業が 内部的に持って、自由に再利用する部分を切り分けできるように できる方がいいだろう。

日本のメーカーの間で、各分野における規模の小さな合併があるが、 そうしてできた企業を合併して日本における独占的地位、 いや、2大企業的な業界にして、効率化を行っていかなければ、 世界に対抗できないだろう。 Linuxはオープンでありながら、 ソースの公開義務や責任者不在のために採用されないことが多い。 つまりビジネス的には、オープンというのは難しく、 オカネで責任を取れるフレームワークを持った企業が必要なのだ。 いきなりそんな企業が登場するのは難しいので、ソフトウェア会社の 大規模な合併に期待したい。

[参考資料へのリンク]
http://biztech.nikkeibp.co.jp/wcs/leaf/CID/onair/biztech/gen/223438
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2003/0110/ces02.htm
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2003/0115/ms.htm


Keyword解説

『フレームワーク』

あるシステムを作成する上で土台となるソフトウェア群のこと。

銀行や会計などのシステムは、各社それぞれが別々に持っているが、 開発元が多くを流用(再利用)して一部をカスタマイズして 提供することが多い。 OEM製品(他社ブランド製品)もそれに近い。

その再利用する部分をある程度まとめたものをフレームワークと呼ぶ。 フレームワーク自体を製品にするケースもあるが、多くの場合、 他社製フレームワークを使いこなすことは難しく、 自分や自社が以前開発したものを流用したほうが、柔軟で素早く 開発できることが多い。 そのため、SIerは、フレームワーク自体を 売るのではなく、自社で持っていることをアピールすることが多い。

実際、フレームワークは明確な形を持っていないことが多い。 バージョンが上がるごとに、対応範囲を増やす可能性が高い。 なぜなら、再利用する部分は、徐々に見つかって変化していくためだ。


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