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週刊 IT ニュース&コラム 2003/12/29
世界初クレシットカードサイズのケータイは中国で開発し中国で販売

2003年12月22日、日経BP社のホームページの記事にて、NECが開発する クレジットカードサイズの小さな携帯電話の詳細について紹介された。

日本ではクレジットカードにもなる携帯電話が発売されたが、中国では、 クレジットカードサイズの携帯電話が発売されようとしている。 サイズはクレジットカードサイズだが厚さは8.6ミリもある。PCカードより 少し小さく厚めといった感じだろう。カメラも内蔵されるという。どれだけ 薄くできるかが技術の見せ所だ。このサイズになると、本体だけで 通話することは物理的に不可能なので、通話するときはイヤホンマイクを 使う。中国では、イヤホンマイクを使うことが多いので、中国で販売する分には 問題ないという。日本で売るなら、タクシーの無線のように、本体にしゃべる ようにして、聞くのはイヤホンを伸ばすようにするなど改良が必要だろう。 ただ、開発コンセプトが、ユーザインターフェイスより本体の薄さに 挑戦することであるので、コメントは差し控えよう。

この記事で注目したいのは、技術的なことではない。最先端の実験的な 商品が中国で発売されるということだ。 日本で技術的な最先端を求める ユーザは、PDAの無線PHSに集まっているのだろう。これが理由であるかは 確かではないが、最先端商品を中国で発売することになった。

発売だけではない。開発も中国で進められているのだ。小さい電子機器を 作り出すことは、日本のお家芸であったと信じられてきたのだが、 実体はすでに違っている。以前からIT機器は世界規模で開発が進められて きており、これまで欧米と組むことが多かったのが、最近は中国と組むことが 多くなったということだ。人民元の為替レートがもうしばらく固定であると予想 されることから、ますます中国を巻き込んだ経済活動が進むだろう。

[リンク]。
http://itpro.nikkeibp.co.jp/free/NC/NEWS/20031222/137786/


週刊 IT ニュース&コラム 2003/12/15
TRONSHOW2004開催、ハイブリットOSの普及はここから始まる

2003年12月11日〜13日、TRONプロジェクトのシンポジウム 「TRONSHOW2004」が開催された。

TRONは東京大学教授の坂村健氏が提唱する純国産OSとして 注目されてきたが、最近では組み込み向けLinuxやWindowsCE との協調路線を取ってきている。その成果が、今年のTRONSHOW で発表された。

Linuxのメインストリームは、情報系サーバになっていることや、 WindowsCEは、高機能化に向かっており、リアルタイム性がなく なってきている。これはパソコンと同じ流れだ。3GHzの高性能 CPUを使っても、依然として待たされるのは、仕事の目的が達成 されれば反応速度はそこそこでも開発を早く終了して、速く市場に 出すことが優先されるソフトが多いためだ。

TRONの1つであるμITRONは、良くも悪くもこの波に乗ることなく 地味に使われ続けてきた。高機能になるとリアルタイム性が 失われるのは、あらゆるものを単一のOSで管理しているためだ。 そこで、LinuxとμITRONや、WindowsCEとμITRONという ハイブリット構成にして、高機能ながらリアルタイム性を持た せようとしている。

というのが一般的な見方だが、私はちがう。μITRONは、パソコン では搭載されないようなハードウェア部品のドライバを開発する 人にとって、しきいが低い。つまり、開発人員を選ぶことなく 早く開発できるのだ。そういった部品を、現在注目を集めている デジタル機器にすぐに組み込めるのがハイブリットOSのポイント だろう。

ユキビタスコンピーティング(どこでもコンピュータ)であるため には、何でもこなす1つのPDAや携帯も持ち歩くのではなく、協調 する小さなコンピュータが周りに置いてあるので手ぶらになれる という形になる。つまり、どんなハードウェア部品と組み合わせ られなければならないということだ。

[リンク]。
http://www.tron.org/show.html
http://ne.nikkeibp.co.jp/members/NEWS/20031211/101138/
http://ne.nikkeibp.co.jp/members/NEWS/20031211/101157/


週刊 IT ニュース&コラム 2003/12/1
地上デジタルテレビ放送開始、4月からは全て著作権保護

2003年12月1日(月曜日)、地上波のテレビ放送をデジタル化した、 地上デジタル放送を、東京、大阪、名古屋で開始する。これに合わせて、 ハイビジョン放送も増えていくことになる。放送開始直後は、コピー 制限しない番組もあるが、来年4月からは、すべてが制限される。

放送エリアは、D-paのホームページに出ている。民放は、東京太田区周辺、 大阪、高槻、堺、奈良市、高取、名古屋、岐阜市南、瀬戸、岡崎西まで、 NHKは、民放のエリアに、東京23区、横浜中区、川越、拍、木更津までが 今回対象のエリアだ。

これまで、衛星放送でデジタル化が進んできたが、最も視聴者の 多い地上放送においては、依然としてアナログ放送だったが、 ようやく日本でもデジタルのテレビ放送が主役になろうとしている。 しかし、世界的に見れば13番目と遅い方だ。ドイツの首都圏では、 サイマル放送(複数の媒体で同じ内容を放送すること)がたったの 1年より短いという強行スケジュールの例もある。日本は、2011年 までサイマル放送をする。これには、デジタルならではの問題を 解決するための期間と考えていいだろう。

デジタルでは、基本的にコピーによる画質の劣化が発生しない。 そこで、コピーガードがかけられるわけだ。1か0しか選べない デジタルでは、アナログ的な画質劣化によるコピー制限が しにくいのだ。製作者に多大な損失を与えないと同時に、 視聴者の自由も認めなければならない。 単純にコピーガード をかけて放送すると、現在盛り上がっているDVDレコーダーが 使い物にならなくなってしまうからだ。

放送が開始された現在でも、どのような暗号技術が使われるかに ついては、業界で標準となっているものは存在しない。 暗号化技術はいたちごっこなので、標準を作ってしまうと、 それが集中的にターゲットにされてしまうことや、 新しい技術をダウンロードなのですぐに入れにくくなるためだ。

ただ、枠組みは決まったようだ。B-CASカードを使わないと 暗号が解けないことと、B-CASカードにダウンロードして暗号の 技術を更新できることと、コピーは禁止だが移動は自由というものだ。 しかし、この「移動」というものは、技術的に非常に難しい。 一般に、移動は、コピーした後で削除するのだが、コピーした 直後でコピーに失敗したような動作をさせると、削除しなくなる。 コピーができないものからコピーすることより、移動できるものから コピーする方が、はるかに簡単なのだ。これに対する解決策は、 今後メーカーの課題となっている。

また、現状では加工ができない可能性が高い。つまり、映画に CMも一緒に録画した場合、CMをカットしてDVDに残すことが できないようだ。 テレビパソコンも、メディアプレイヤーや DVDソフトウェアで再生するタイプのものは、使えなくなりそうだ。 なぜなら、パソコンの管理下のデータになってしまえば、 コピーが自由自在になるからだ。パソコンはDVDレコーダーを コントロールすることしかできなくなるかもしれない。

しかし、マイクロソフトがこれに対抗するだろう。 おそらく、パソコンを識別して、特定のパソコンでしか 解読できない暗号を使うと私は見ている。 しかし、それでは、 反対するものも多いだろう。パソコンを買い換えたら使えなく なるからだ。

暗号化したファイルを解読するためのハードウェアのキーがある。 録画や移動するときは、必ず特定のキーでしか解読できない暗号化を すればいいのだ。そうすれば、友達の家に集まってスポーツ観戦 というのもできる。プレイヤーを持っていく必要も無い。 年齢制限も同じ技術が使えるだろう。

こういった大枠が標準化されていき、具体的な暗号技術は、 暗号ソフトのダウンロードで更新する形になるだろう。 しかし、暗号化して記録したデータに対して、暗号を更新する ことはできない。暗号が破られたとき、そのコンテンツは、 コピーフリーと同じになる。 しかし、コピーのかかっていない 現状よりはましだろう。 なぜなら、暗号が破られるまでの期間、 つまり、発売開始から何年かは保護されるからだ。その間が、 商売ができる期間と考えることができる。そして、将来、 暗号が破られたとき、人類共有の財産となる、といいのだが、 問題は、著作権保護機関(50年)が守られない可能性があることだ。 後は、法に頼るしかない。 現在の法律では、ファイル共有ソフトは 無罪でも、著作権違反を起こす暗号解読ソフトは有罪だ。現在と 同じく、暗号が解読されたデータがファイル共有で広がるだろう。 もちろん、ネットワークにそのようなデータを置いた時点で 犯罪になるのだが。

[リンク]。
http://www.d-pa.org/


週刊 IT ニュース&コラム 2003/11/17
コストを度外視してから開発した新バイオは世界最軽量でファンレス

2003年12月6日に、ソニーは、バイオ開発チームが全力で開発した、 新型バイオを発売する。厚みは9.7〜21mmと世界最薄、重量は825gと 世界最軽量、そして、それらを実現するために、ファンレスにした。 ソニースタイル専用モデルでは、カーボンファイバー積層板を採用 した特別仕様で785gという脅威的な軽さを実現した。価格は35万〜 40万と高め。逆に自慢できるのかも知れない。

CPUは、超低電圧版Pentium M 1GHz、メモリ512MB、HDD20GB、 USB2.0x2、IEEE 1394、PCカードと、薄型サブノートの標準的な 構成である。世界最薄を実現するために、キーボードの下には 基板を配置していない。PCカードスロットとハードディスクの 下にも配置していない。すると残りは、MD(ミニディスク)サイズ しか無いのだが、そのサイズにCPUとチップセットとメモリを 集約している。バイオにはメモリスティックスロットが付きもの だが、それはマウスに付いている。LANコネクタだけは、補助的な ミニケーブルを必要とし、無線LANも内蔵していないが、営業の人など 外で主に使う人は、ケータイやPHSを使うので、不要という人も いるだろう。

今回、開発当初はコストを考えないで最新の技術を導入するように 進められてきたという。QUALIAブランドを思い出すが、その ブランドで出さなかったのは、バイオブランドの強化をねらったため だろう。ライバル松下が最軽量でリードしているのを意識したの だろう。そのため、最終的にはコストが要求された。そして、 基板が小さいと、デバッグのためのピンを当てられない部分ができ、 開発が非常に難しくなる。そしてファンレスにして一気に軽量化を 実現した。ファンレスであることは、当然、静かである。 デスクトップでは水冷で静音化に成功したPCがあるが、重たくなる 欠点があるため、ノートでは採用しにくい。ファンレスという思い きった方針は、ファンが当然といわれるパソコンでは、熟練者ほど 考えらつかないことだ。

スペックを文字でいくら説明したところで、一目見たときの 衝撃を伝えることはできない。下のリンクを参照してほしい。

[リンク]。
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2003/1112/sony1.htm
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2003/1113/ubiq32.htm


週刊 IT ニュース&コラム 2003/11/04
中国がデジタルテレビに注目。技術の取り込みに苦心か

2003年10月29日、FPD International 2003 にて、中国のデジタルテレビ を推進する責任者が講演を行い、現在の状況を説明した。

日本では今年の年末から一部でデジタル放送が開始されるが、 中国では今年から有線デジタルを普及させ、2005年に地上波で デジタル放送を始めるという。2008年には産業化し、 HDTVでオリンピックを放送するという。2010年には、広い中国 全土に展開し、2015年にはアナログ放送を停止する計画だ。

中国は安い人件費と外国資本の受け入れで世界の工場に 成長したが、国内では熾烈な価格競争が行われている。 これが逆に目先の利益に集中し、コア技術の蓄積が あまり行われていないという。 日本のメーカーを積極的に 取り込んで成功させたいという。 すでに東芝が強い関心を 示していると言う。

中国は社会主義国であるため、思想に悪影響を及ぼす 可能性が高いテレビ放送は国家が厳しく監視している。 そこに、民間のしかも外国の企業が参加することは、 大変なことである。 ハードウェアだけならまだしも、 米タイムワーナーの傘下の華娯が限定的だが放送権を 獲得している。 実は、現在でも、中国の放送には日本を含め 外国の番組制作会社が参入している。 政府の厳しい 管理の下、放送が制限されることもあるため、政府は これまでのように。うまく外国の技術を吸収しようとしているようだ。 しかし、タイムワーナーの件は違う。 中国は、アメリカで 放送を通じて情報発信をするようになってきているが、 その放送媒体であるBSやCATVが米巨大メディアの 下にある。 中国で不当な制限を行うと、中国の外国 進出に影響が出るというわけだ。

[リンク]。
http://ne.nikkeibp.co.jp/DTV/2003/10/1000020591.html
http://biztech.nikkeibp.co.jp/wcs/leaf/CID/onair/biztech/biz/255298


週刊 IT ニュース&コラム 2003/10/20
Microprocessor Forum のトレンドは省電力

2003年10月13日〜16日、アメリカのサンノゼでCPUの発表会、 第16回マイクロプロセッサフォーラムが開催された。

プロセッサの動作周波数が 3GHz台に入り、消費電力が急速に大きく なってきている。 これまで高速化の手段は、単純に動作周波数を 向上させることであったが、そろそろ限界を迎えようとしてきている。

この問題に対しては、プロセスルール(配線の幅)を細かくすることで、 電力を抑えてきたが、最新のプロセスルールでは、リーク電流などにより 電力を抑えることが難しくなってきた。 ダイナミックに動作周波数を 変えたり、電源を供給する回路を制限したりしてきたが、それを駆使した セントリーノ・プロセッサも、従来より20%〜30%しか改善されなかった。 では、今後、どのようにしてプロセッサの性能を上げていけばいいの だろうか。

今回のマイクロプロセッサ・フォーラムでは、その解決策として、 マルチプロセッサが注目されている。 古くからマルチプロセッサを 搭載してきた IBM やトランスメタ社に追い風が吹いているようだ。 すでにペンティアムでは、ハイパースレッディングという名前で 搭載されているが、AMD もマルチプロセッサに力を入れていると 発表した。

中でもトランスメタ社の新しい省電力アーキテクチャを持った プロセッサ「Efficeon」(エフィシオン)は、旧アーキテクチャの 「Cruesor」(クルーソー)の弱点であった、アプリケーションの 起動の遅さに改善を加えたというから注目だ。 もし、これが 改善されたのであれば、マルチプロセッサの特徴である省電力が 再注目され、他のプロセッサには無い魅力となる、と思うかもしれないが、 クルーソーの経験を踏まえると、消費電力が減った分は、性能 アップに使われるだろう。つまり、同じミニノートでも、 周波数が高いものが搭載されるというわけだ。

プログラマにとって、今後マルチプロセッサが多くなるにつれて、 新たなテクニックを身につけておくといいだろう。たとえば、 プログラムの変数の依存関係をなるべく分散させるなど。 ただ、そのアプローチは、プロセッサごとに異なるだろう。 ハイパースレッディングの場合、1つの処理を複数のスレッドに 分割すればいいだろう。 IA-64や Efficeon のように、アセンブラレベルで 並列に行う場合は、ループを展開したり、小さい関数を作らないように すればいいだろう。しかし、それに関するテクニックを使って どの程度改善されるかについてのデータは、ほとんど無い。 しかし、無いからこそ、他と差別化できるのだ。

[リンク]。
http://japan.cnet.com/news/ent/story/0,2000047623,20061455,00.htm
http://www.crusoe.jp/index.html


週刊 IT ニュース&コラム 2003/09/15
Windowsにまたセキュリティーホール、Blasterを教訓にせよ

2003年9月11日、Windowsにまた大きなセキュリティーホールが公開され、 Windows Update などで対処するように呼びかけている。

会社や学校などでLANを構築しているところでは、Blasterウィルスや その亜種(同じようなウィルス)に感染したところが多いだろう。 これまで、メールによる感染が多かったのに対し、Blasterは ウィルスに感染したパソコンをLANに接続しただけで、感染を 広げていく。 そのため、1台でもセキュリティを対処していない パソコンがあると、被害が爆発的に広がる。

あなたは、ウィルスに感染したとき、まずすることは何か心得ている だろうか。それは、ネットワーク・ケーブルをパソコンから抜くことだ。 決して、Windows Update をしたり、駆除ソフトを入手しようと してはいけない。 それは、後で別のマシンを使って行う。

しばらく Windows Update していないパソコンも、LANにつなげる 前にしなくてはならないことがある。 それは、セキュリティパッチを 当てることだ。 家でパソコンが1台しかないときは、Windows Update をすればいい。 しかし、LANの先にインターネットがあるときは、 決して LAN に接続してはいけない。つまり、Windows Update でできるセキュリティ対策を、ネットワークにつなが「ない」で行うことだ。 しかし、ネットワークにつなげないで、便利な Windows Update を 使わないで、どのようにパッチを当てるのだろうか。

インターネットにつながっているマシンがあれば、マイクロソフトの TechNet Online のトップページから、セキュリティ情報一覧を選ぶ。 最新の累積的なセキュリティパッチ(またはサービスパック SP)と、 それ以降に出た新しいセキュリティ・パッチをダウンロードし、 フロッピーディスクやメモリスティックを使って、セキュリティ対策を するパソコンにコピーして実行する。使ったフロッピーやメモリスティック は、フォーマットして抜くこと。 累積的なセキュリティパッチは、 パソコン雑誌に付いてくる CD から入手するといいだろう。

それから、ウィルスソフトを使って、ハードディスク全体を スキャンしよう。いきなり、ウィルス・スキャン・ソフトを 使ってはダメだ。

Blaster は、Winows Update をきちんとしていたパソコンには 感染しなかった。もともと信用のないマイクロソフトだから、 Windows Update しなかった人もいるだろう。 確かに過去には、 Windows NT サーバを、Windows Update で一度にダウンさせた ことがあるらしい。 しかし、マイクロソフトは、Windows Update サーバを Linux にして誇りを捨ててまでも信頼性に かけている(だから、Linuxが信頼性があると考えるのは 短絡的過ぎるが)。 セキュリティ・パッチも多くのテストをして から公開している。 もし、セキュリティ・パッチで世界中の パソコンをダウンさせたら、同社の壊滅的なダメージとなる。 法的な損害賠償から巧みに逃れても、Windows 以外を真剣に 検討するユーザが急激に増えるだろう。一歩間違えれば、 マイクロソフトは危機的状況に陥る。それをマイクロソフトは 認識しているはずだ。

福沢諭吉は、学問をしてお金儲けをすることはいいことだと 説いている。しかし、妬まれないことも大事だとも説いている。 技術的に優れていても、嫌われていては、総合的に考えれば 信頼性は低くなる。 技術がすべてではないのだ。

[リンク]。
http://itpro.nikkeibp.co.jp/free/ITPro/NEWS/20030911/1/
http://www.microsoft.com/japan/technet/default.asp


週刊 IT ニュース&コラム 2003/09/01
住基ネットの住民票サービスが開始、住基カードの配布も

2003年8月25日、日本の各市町村区は、住基ネットのサービスの1つである 全国どこででも住民票が取得できるサービスを開始した。

住民票はこれまで、発行する人の本人または同一世帯のものが、 発行する人の住所のある市町村区でしか、発行されなかったが、これからは、 後者の制限がなくなる。 つまりどの市町村区でも発行できるということだ。 厳密に言えば、当然だが、住基ネットに加入を見合わせている市町村区では 発行できない。 その市町村区の住人は、全く利用できない。

本人の特定は、住基カードまたは写真入りの身分証明書を提示することに よって行う。 住基カードには写真入と写真なしを選択できるが、写真入りで あれば、身分証として使えるだけでなく、仮に落としたとしても、誰かが 悪用することはできないので、便利で安全性が高い。

今のところ、住基カードを持っていても市町村区に行かなければならないため、 写真による本人特定が行われていて、安全だ。 しかし、将来的には、 パソコンでできるようになる。 つまり、落とした場合、クレジットカードと 同等の危険が伴うことになるということだ。 ただ、住民票によって本人特定を 行うことができる日本全国すべての民間サービスも、本人に成りすますことが できるようになってしまい、被害の限度がゆるい。 そのため、トラブルの多い 消費者金融では、住基カードによる本人確認を法律で認めていないらしい。 おそらく、被害にあっても住基カードしか証明材料がないときは、 法律的には支払い義務がなくなるかもしれない。 もちろん、消費者金融側は、 それ以外の本人特定材料を求めることになるだろう。(この辺は素人発言 なので詳しくは他をあたってほしい、)

住基ネットの不安材料は挙げて行けばきりがない。 完全なセキュリティは 存在しないのだ。 フェイルセーフの考えを入れて損害保険に入るのも 1つの手だろう。 しかし、保険に入れない人や、デジタルに弱い人、 社会的に弱い立場の人など、人によっては、ネットワークによるサービスの 充実より、安全性を優先する人もいるだろう。 デフォルトでは、安全性を 優先するのが、ソフトウェアを開発する上での常識となっている。 しかし、安全性より利便性を求める人もいる。 そのため、ソフトウェアには オプション設定ができるようになっている。 アドバイスはできても、強制する ことはできないのだ。 だから、選択性を積極的に採用すべきだろう。 二兎追うものは一兎も得ず、と言われるかもしれないが、、市場原理を 入れることの方がいいと思われる。 それも、個人単位で。 県や市町村が 判断するものではないのだ。

全国一斉にしないと住基ネットの意味がないと言われているが、本当だろうか。 小さな市町村を助けることと混同していないだろうか。

[リンク]。
http://internet.watch.impress.co.jp/cda/news/2003/08/25/241.html
http://www.city.suzuka.mie.jp/life/benri/2203.html


週刊 IT ニュース&コラム 2003/07/28
PDA各メーカーが独自開発のARMプロセッサを採用

2003年7月18日、ソニーは新型CLIEに、独自開発したARMプロセッサ CXD2230GA「Handheld Engine」を搭載した PEG-UX50 を発表した。 8月9日発売予定。一方、サムソンはARM系プロセッサとしては最速となる S3C2440 というプロセッサを発表した。今年度第4四半期に量産を 予定している。サムソンは、WindowsCE機を多数発売しているので、 そのどれかに組み込まれるのはまちがいないだろう。

2000年、インテルがStrongARMを開発したことで、WindowsCEの代表 であるPocketPC(現在はWindowsMobile)は、ARM専用となった。 これまで非力だったPalmも、ARM機になった。 それを受けて各半導体メーカーは、ARM系プロセッサの開発に 乗り出してきた。その成果が、最近発表されてきている。

ソニーの CXD2230GA は、動作周波数こそ最高123MHzと高くないが、 CLIEの機能のほとんどを1チップに組み込み、MPEG-4の再生に適した 構造になっているため、大きな動画をスムーズで低消費電力で 実現している。音楽再生は従来機2.3倍の16時間に、動画再生は 1.4倍の5時間になった。動作が軽いPalmなら、この周波数でも アプリは十分に動くと判断したのだろう。1チップ化によりCLIE 本体の小型化にも貢献している。

サムソンの S3C2440 は、最高動作周波数が533MHzとあり、PDAに 組み込めるものとしては現在世界最速だ。現在主流の0.18μより 細かい0.13μのプロセスを使っているが、消費電力は未公開だ。 0.18μより細かくなったら、消費電力の低下の割合は小さく なると言われているため、PDAとしてはつらい可能性もある。 実際のところは不明だ。

このように半導体メーカーの鼻息は荒いのだが、PDAの売り上げは 落ちてきている。自社製にこだわるのもいいが、それができるのも、 ソニーがPalmで(日本で)トップだからだ。それに、自社製にできる だけの技術者を集められるのも、ソニーならではだろう。 出荷量は携帯電話の方がはるかに上だ。商売を考えるとそちら なのかも知れないが、技術力をアピールするならPDAなのだろう。 ソニーショックによりモノ作りの初心に戻りつつあるから意識改革の 1つとして開発されたのかも知れない。

[リンク]。
http://ne.nikkeibp.co.jp/mobile/2003/07/1000019255.html
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2003/0723/samsung.htm


週刊 IT ニュース&コラム 2003/07/14
純国産のリアルタイムOSはオープンソース

2003年7月10日、YRPユキビタス・ネットワーキング研究所副所長の越塚氏が、 組み込みシステム開発技術展にて、T-Engineの動向について語った。 T-Engineの開発は順調に行けば、今年の年末に開催されるTRONショーまで には現象を終え、成果をオープンソースにするという。

T-Engineは、家電だけでなく、携帯電話やPDAといった情報機器にも 普及を目指すべく、TRONよりも厳密に規格が決まっており、移植性を高め、 開発コストを低減する。 WindowsCEやLinuxやJavaが組み込み向けに普及し始めて いるが、CEは価格が高いイメージがあり、LinuxやJavaはリアルタイム性が低い イメージがある。その両方に対する答えが T-Engine なのだろうが、 普及のカギは、性能と移植性の証明だ。

T-Engineは、規格がすでに出来上がっている 標準T-Engine、μT-Engineと、 規格作成中の n(ナノ)T-Engine、p(ピコ)T-Engine からなるが、ミドルウェア レベルでは、すべてのアーキテクチャに対して互換性があるという。 たとえば、A社製の携帯電話の1つのアプリが、B社製の携帯電話でも 動くようになるだけでなく、PDAでも動くということだ。 しかし、これは すでに Windows CE が実現している。 CEでなく T-Engine を採用したく なるためには、オープンソースがその1つであるが、性能や移植性が、 CEを超えなければならない。 そう考えると、難しい道のりに見えてくる。 各メーカーが Linux に注目している中で、どれだけ T-Engine に リソースをつぎ込もうとするかがカギだ。 そうなるために T-Engine の 魅力をYRPが伝えなければならないが、現状はその意気込みだけで、 技術的な情報は非常に少ない。 年末の TRONショーで紹介される だろうが、雑誌が多数出なければダメだろう。 オープンソースであることで、 技術的な情報は多少出るだろうが、マニアなユーザが実際に手にとって 遊べるように、PDAなどで採用されない限り根付かないだろう。 鶏が先か卵が先か。新しいゲームと同様なキラーアプリが求められている だろう。

ただ、T-Engine は、Linux や Java と対立する関係はとっていない。 Linux や Java のプログラムがそのまま動くように、T-LinuxやT-Java というミドルウェアが用意される。 つまり、APIを T-Engine 製にする のではなく、各ディストリビュータが提供している ナントカLinux や ナントカJava実行環境を、T-Engine製に置き換えようとしているのだ。 Linux は、オープンソースであっても、基本的にコードの所有者が 最も自由であるために、部外者が修正したソースは引き継がれない ことが多い。 参考にされてコーディングスタイルを変えられて引き継がれる、 悪い言い方をすれば、奪われることが多いのだ。 メーカー自身が Linux を開発することが多くなってきた。 どこかのディストリビュータが 作成した Linux を採用しなくなってきたのはこのためだろう。 メーカー独自の Linux が T-Linux に変わると、所有者が YRPに なってしまうと、メーカーが拒否する可能性がある。 単にオープンソースであるだけでは不十分なのだ。

[リンク]。
http://www.zdnet.co.jp/news/0307/11/nj00_tengine.html